【不動産】民法改正に伴う詐害行為取消の対象範囲の限定

詐害行為取消権とは、銀行から借金をしたり、買掛金などで仕入れをしたりしている不動産の売主が債権者を害することを認識しつつ自らの財産を売却するなどして財産を積極的に減少させた場合に、債権者が裁判上その法律行為を取り消して財産を返還させ、責任財産(抵当権や先取特権を有しない一般の債権者が債権を回収する際に引き当てとなる債務者の財産のこと)を保全するための制度です。

簡単に言えば、業績が大変厳しく、財務内容が悪い(債務超過等)状態で多額の借金がある法人等が、唯一所有している不動産を市場価格より安い値段で友人に売却したり、贈与したりして資産を逃がしてしまうことが許されてしまうと、その法人等が破綻した時にその法人に債権を持っている人が回収できるお金が減ってしまうことになります。その様な行為を行わせないために、詐害行為取消権というものが金銭債権者に認められています。

しかしながら、この詐害行為取消権が存在することにより、例えば債務超過状態にある法人など、財政状態が厳しい状況の売主から不動産を買おうとすると、例え売買価格が時価であると認識している全くの善意の買主であったとしても、売主に詐害の意思があった場合には、債権者からその売買を後日取り消しされてしまうかもしれないということとなり、法律的に非常に不安定な状態に陥ってしまいます。善意の買主は、それを避けるために、売買価格が妥当であることの第三者意見として鑑定評価書を取得したり、売買契約書上に「売主は詐害の意思がない」と記載してもらったりと色々な手当てをするものの、どこまで行っても後日、詐害行為取消が絶対にされないという状態にすることは法律的に不可能でした。

2018年以降に予定されている民法改正においては、詐害行為取消しの対象が不明確かつ広範だと、経済的危機に直面した債務者と取引する相手方が萎縮し、再建可能性のある債務者が破綻に追い込まれるおそれがあり、それを避ける目的で、債務者の財産や経営状況が悪化した場合の処分行為について、詐害行為取消の対象となる範囲が限定されることとなりました。
具体的には債権者は、次の3要件に全て該当する場合に限り詐害行為取消請求をすることができる(新民法424条の2)ことになりました。
①債権者を害する結果となり
②売主に債権者を害する意思があり
③買主がその意思を知っていた場合

買主が、売主の詐害の意思を知らなければ、詐害行為取消とならないのですから、非常に法律的に安定することとなります。この改正により、経済的危機に直面した債務者も資産を売り易くなることから、債務者の事業再生の可能性があがることとなると考えられます。

【不動産投資評価】売買価格 -その2-

前回に続き「不動産の売買価格」についてのお話しです。

あなたが「この不動産は幾らですか?利回りは何パーセントですか?」と質問した答えとして、「この不動産の値段は1億円です。利回りは10パーセントです。」と言われたとします。この答え方はある意味正解ですが、ある意味において不十分で不正確なものになります。

その二つ目の問題点は、対象物件に入居している賃借人から売主が預かっている敷金・保証金などの取り扱いがどうなっているのか不透明という点になります。

不動産を賃借する際に、所有者に対して差入する敷金や保証金などは、通常、賃借を終了し退去する際に所有者から賃借人に対して返還されることになります。(一般的に退去時の原状回復工事の費用などを差し引いて返還されることが多いかもしれませんが、それについてはまた追って言及するとしてここでは一旦無視します。)
つまり、所有者は入居者に敷金や保証金を返還する債務を追っていることになります。その債務のことを、敷金返還債務、保証金返還債務といいます。

居住用物件では、敷金は一般的には家賃の2ヶ月分などであり、物件の売買価格と比してさほど高額になることはないのですが、事業用物件については、家賃の10ヶ月分やそれ以上の敷金・保証金が差入れているケースも珍しくなく、中には売買価格の10%以上の敷金・保証金返還債務が存在するような物件も存在します。

その敷金・保証金返還債務を売主買主間でどう承継し、引継ぎするのかという問題があるのですが、商習慣上は主に2種類の方法が存在します。
売買代金が消費税別1億円で敷金返還債務が1千万円の物件を例に確認してみたいと思います。
【東京方式】
売主が負担する入居者に対する敷金返還債務を買主が承継する見返りとして、敷金返還債務相当額の金銭を売主が買主に対して渡す方式。
つまり、例のケースの場合、買主は1千万円の敷金返還債務を負う代わりに、売主に対しては1億円(消費税別)から1千万円を差し引きした9千数百万円を支払いすればよいことになります。

【大阪(関西)方式】
売主が負担する入居者に対する敷金返還債務を買主が承継するだけで、その見返りの金銭交付は特にない。
つまり、例のケースの場合、買主は売主に対し1億円(消費税別)を売主に対し支払いし、それとは別に入居者に対する敷金返還債務1千万円を負担することになります。

上記の2種類の承継方法は、あくまでも売主買主間での合意に基いて決められるものであり、どちらが良い方法であるというものではないのですが、不動産の売買価格として判り易いのは明らかに東京方式になります。敷金返還債務は、今直ぐにお金は必要ではないですが、入居者が退去する時には必要になる債務であり、入居者からの借金と同じような性質のものです。大阪(関西)方式では、投資する不動産が1億円の値打ちがあると思って買おうと思った後に、「別に1千万円の借金がついてますんでよろしく。」と言われるようなものです。非常に判りづらく、フェアな価格提示でないことは明らかなのですが、関西では今でも大阪方式が主流となっています。
※敷金承継東京方式では、実質的な不動産取得価格は1億円(消費税別)、敷金承継大阪方式では実質的な不動産取得価格は1億円(消費税別)+1千万円となります。敷金承継方法が東京方式なのか大阪方式の差で、実質的な不動産取得価格が10パーセント変動することもあるのです。

ここまでこの記事を読んで頂ければ、あなたが「この不動産は幾らですか?利回りは何パーセントですか?」と質問した答えとして、不動産会社が「この不動産の値段は1億円です。利回りは10パーセントです。」と答えた時、その不完全さが理解できると思います。
そのような場合は間髪入れずに、「その値段は消費税込み?別?敷金承継は東京方式?大阪方式?」と質問し、「本当の売買価格」を確認する必要がありますが、そもそも、居住用の投資物件の購入なのに、1億円が消費税別、敷金承継大阪方式の前提で利回り10パーセントと答える不動産会社から物件を購入するのは避けた方がよいと思います。

【不動産投資評価】売買価格 -その1-

収益不動産や事業用不動産に投資を行う場合には、対象不動産を適切に評価し、その不動産を取得・保有・売却する際の各種リスク、法令などを調査するデューデリジェンス(DD)が必要になります。

不動産は投資対象として税制的にも優遇されていることに加え、実物資産であり基本的には安定した資産ですが、投資を行う場合には知っておかなければならない要素が多岐にわたります。このシリーズでは、不動産投資における様々な要素を一項目ずつ深く掘り下げてご紹介していきたいと考えております。

初回は、不動産に投資する時に誰もが意識する「売買価格」についてです。不動産に投資する時に、「まずこの不動産は幾らなのか?」と最も気になる要素であり、非常にシンプルな話しだと感じますが、意外と奥が深いです。

例えば、あなたが「この不動産は幾らですか?利回りは何パーセントですか?」と質問した答えとして、「この不動産の値段は1億円です。利回りは10パーセントです。」と言われたとします。この答え方はある意味正解ですが、ある意味において不十分で不正確なものになります。

一つ目の問題点として、1億円という値段は、消費税込みの値段なのか?消費税別の値段なのか?が判りません。不動産売買においては、その不動産について土地が幾ら、建物が幾らという内訳を売主買主間で決めた後、建物部分について消費税がかかることとなります。この場合、土地5千万円、建物5千万円の不動産であると仮定しましょう。本日時点の消費税率8%で計算すると、建物の消費税額は4百万円になります。つまり、このケースで1億円が消費税別の場合、消費税込みの価格は1億4百万円になることとなります。消費税別では、利回り10パーセントでも消費税込みで計算すると9.61パーセントとなってしまいます。

※補足説明になりますが、利回り計算の分母とする売買価格は、アパートやマンションなどの居住用資産については消費税込み価格、オフィス、店舗、ホテルなどの事業用資産については、消費税別価格を提示するのが一般的に妥当と考えられています。理由としては、居住用資産から生じる賃料収入は基本的に消費税が課税されない非課税売上となり、事業用資産から生じる賃料収入は基本的に消費税が課税される課税売上となるのですが、その物件から生じる課税売上の比率に応じて、購入代金として支払いした消費税の還付を受けれるからという考えがベースにあります。つまり、アパートやマンションなどの居住用資産は購入時に支払いした消費税は払いっぱなしとなるが、オフィス、店舗、ホテルなどの事業用資産については購入時に支払いした消費税は後日還付を受けられることが基本となります。(購入主体となる法人や個人の消費税の取り扱い方法や、購入物件を買う前の課税売上割合などによっても還付を受けられるか受けられないかが変わるため、詳細は税理士などの専門家にご相談下さい。)

二つ目の問題点は・・・。次回ご説明させて頂きたいと考えております。

 

【不動産】平成27年公示地価と大阪の不動産売買マーケット

本日、16時58分から放送される朝日放送「キャスト」から当社代表者が取材を受けました。3月18日に国土交通省が発表した平成27年1月1日時点の公示地価で、ミナミエリアの商業地の上昇率が上位を占めており、その要因を分析するという主旨でした。

短時間の取材では、中々全ての要因をお伝えできないので、整理して記載させて頂きたいと考えております。

大阪の土地価格全体としては、リーマンショックからの立ち直り、金融緩和による金融資産での運用難の状況があり不動産での資産運用に資金が流れてきていること、円安により海外の不動産投資家からみて日本の不動産価格が割安に見えることなどから、全体的に徐々に土地価格が上昇している状況にあります。ただし、その上昇については、全ての土地が一律に上昇している訳ではなく、利用価値の高い土地は大きく値をあげる一方、利用価値の低い土地は逆に値を下げるという二極化が鮮明となっております。

そのような状況の中、利用価値が高い(=その土地で商売を行った場合に多くの売上が計上できる)土地というのがどういう土地なのかについて、ここ5年で大きく変化してきています。5年前は、賃貸マンションや、分譲マンションを建てられる土地が最も利用価値が高いという環境でしたが、約3-5年前には老人ホームなどのシニア施設を建てられる土地が最も利用価値が高いという環境に変化し、最近では訪日外国人客向けの施設(商業施設・ホテル)などを建てられる土地が最も利用価値が高いという環境に変化してきています。

訪日外国人の増加や爆買いが大きく報道されるようになり、街で多くの外国人の方を見るようになりましたが、日本全国の都市の中でも大阪は特に強く恩恵を受けています。理由としては、過去の訪日外国人の方々の日本での動きは、成田空港で日本に入国し東京に滞在し、新幹線で京都観光をしたり、飛行機で他の都市を観光したりという状況であり、大阪に観光に来る方は京都まで来たついでに大阪に立ち寄るというのが中心でしたが、関西国際空港へのLCCの就航により大阪から日本に入国する方が増加したことにより、大阪に数日滞在し大阪観光をされる方が大幅に増加していることが主因です。また、大阪は過去、訪日外国人観光客が少なく、ほぼ需要が無かった状態から、一気に需要が増加しているという事実もあります。特にホテルは、訪日外国人を想定した客室がほぼ存在していなかったことから、ホテルの客室が全く足らない状態となっており、新しいホテル建設の土地を多くのホテルプレーヤーが奪い合いする状況となっています。

将来もこの状況が継続するのかについて、「今は円安だから訪日外国人が増えているが、円高にふれたら一気に訪日外国人は減る。あくまで一過性の流れ。」という見方をされる方も多いのです。確かに円安が追い風になっている側面は否定できませんが、2000年や2006年の円安の際に現在の規模で訪日外国人客が大幅に増加しているかといえば全くそうではないです。円安要因もありますが、最も大きい要因は日本の近隣諸国(中国・韓国・東南アジア)が経済力を持ち始め、旅行にお金をかけれるようになっていることであると考えます。(日本と近隣諸国の経済格差が縮まったことにより、近隣諸国の人々が日本に旅行に来れるようになった)
つまり、経済動向、為替動向、政治状況によって当然、訪日外国人客が大きく増減することは考えられますが、近隣諸国の人々が海外旅行にでかけられるようになったこと、海外旅行に出かける人々のうち何割かの人々が近くの国である日本に旅行するというトレンドが大きく変化することはないと考えられるため、一過性の流れという見方より、大きなトレンドになっているという見方の方が信ぴょう性が高いと考えられます。

近隣諸国からの訪日外国人客が持つ大阪のイメージは、道頓堀、心斎橋エリアのイメージであり、多くの方がミナミエリアでの宿泊やショッピングを希望されている現状があります。ミナミエリアは、キタのグランフロント開業や、阿倍野の再開発の影響で数年前まで商業的に非常に厳しい状況になっておりましたが、訪日外国人客の多くがミナミに集まるようになったため、数年で様変わりしています。商業的に一番賑いがある場所の不動産が一番上昇するという当たり前の理由で、大阪の公示地価の中でもミナミエリアの商業地が突出して上昇しているのです。

今まで暗いニュースしかなかった大阪ですが、LCC就航による関西国際空港、商業地の復活、USJの盛況、カジノの開業可能性など明るいニュースが増えてきております。また関西国際空港の民営化により発着料を下げれる可能性もあり、更に多くの航空会社が関西国際空港に就航する可能性もあります。それらの可能性を民間の力が活かして、日本第二の都市である大阪が更に明るくなればと期待しております。

【不動産】非居住者から不動産を買う場合の注意点

昨今のアジア諸国の経済発展や、円安の進行により、日本の不動産がアジア諸国との比較で割安となっていることから、それらの国の人々が日本の不動産に投資を行う機会が増えています。実際、東京中心部の高級マンションには日本の非居住者からの購入希望者が殺到し、抽選により購入者を決定しているような状態になっています。日本の不動産に資本が流入してくることは、不動産マーケット自体には追い風で良いことが多いのですが、個々の売買の実務・税務などにおいては注意点があります。

・非居住者から不動産を購入する場合、売買代金の約1割(10.21%)は売主に渡さず、源泉徴収の上、税務署に納税する必要がある。

例えば、香港に居住する方から日本の不動産を1億円(税別)で購入した場合、約90百万円は売主に、約10百万円を源泉徴収として税務署に納税する必要があるのです。それを買主が知らずに売主に1億円を渡してしまった場合、買主は1億円の他に約10百万円を税務署に支払わなくてはならず、二重払いが必要となってしまいます。そんなルール知りませんでしたでは済まず、源泉徴収分の納税をしなければ、不納付加算税(1割)を加算した上で税務署は課税処分してくることになります。それでも支払わなければ、買主に対し差押えまでしてくることもあり得ます。その措置に不満を持った買主と国との間で裁判で争った判例もありますが、最高裁でも国が勝訴しており、買主は二重払いを強いられることが確定しています。買主は二重払いした源泉所得税部分について、売主に対し請求することは当然できますが、請求して払ってくれるかは別の問題です。
この例のように、売主の国籍が海外であるならばまだしも、国籍は日本で見た目も日本人で一年の半分(183日)以上を海外に居住、一年の半分弱を日本に居住している人から不動産を買った場合も同じ問題が生じます。一年の半分弱しか日本に住んでいなくとも、日本に住民登録をして住民票を発行することは可能です。住民登録ができるということは、その売主の日本人は住民票も印鑑証明も持っているのです。どうやって居住者なのか非居住者なのかを見分ければよいのでしょうか?書類の郵送先が海外になっているなどがあれば判断できる可能性はありますが、そうでなく且つ売主がその事実を隠していた場合、買主が独自にその判断をするのは実務上、非常に困難であると考えます。そのようなリスクも不動産売買には内包されていることへの理解が求められると同時に、不動産の売買を行う際には、そのようなリスクまで指摘してくれるアドバイザー(不動産仲介業者)を選定する必要があると考えます。

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【不動産】建物に対する適切な評価方法を持たない(持てない)日本の不動産マーケット

日本の不動産マーケットにおいては、建物の寿命はおおよそ30年、長く見積もっても50年という共通の理解があります。地震が頻繁に発生する土地柄、築50年の建物なんていつ倒壊するかわからず怖くて仕方がないという感覚を多くの人が持っています。
日本の建物に対する耐震基準は大きな地震による被害が発生するたびに、より厳しく、より地震につよい基準に変化してきています。耐震基準が変化するたびに、耐震基準が変化する前に建てられた建物は、「旧耐震基準」の建物と呼ばれるようになり、借り手や買い手が少なくなっていくことから自然に淘汰され、新たな耐震基準の建物に建て替えられる流れとなります。

この様に建物の寿命が短いと考えられている日本においては、建物を建築した後に建物のリニューアルやリノベーションなどの追加の投資をするという考えが乏しいのが実情です。昨今、リノベーション住宅という言葉が浸透し、新築の建物より、安い築古の物件を購入し、自分好みの内装にリノベーションすることの認知度が広がってきていますが、不動産の売買マーケットにおいては、リノベーションをしても、その建物の価値は、リノベーションにかけたお金を大幅に下回る金額しか価値が上昇しないマーケットとなっています。

一方、イギリスに代表される欧米の不動産マーケットにおいては、 代々建物のリニューアル、リノベーションを繰り返し100年を超えるような建物が沢山存在し、手をかければかける程、建物の価値は上昇していくというマーケットになっています。手をかけて、歴史を積み重ねていった建物ほど、高い評価を得られるマーケットであり、リニューアルやリノベーションにお金が必要であっても、かけたお金以上の建物価値の上昇が見込めるため、皆が建物を大切に長く使おうとすることになります。

上記の考え方の違いが、建物の減価償却の考え方にも影響を与えています。
日本においては、不動産を取得するときに、売買代金のうち土地、建物それぞれ幾らの内訳とするのかを決めます。イギリスでは、不動産は建物は幾らとか土地は幾らとか区分して売買されるわけではなく、通常は土地と建物を一括して「土地および建物」として売買されます。また不動産を貸借対照表(B/S)に計上する時にも両者を区分せず「土地および建物」としてひとつの資産として計上します。
土地と建物に区分されていないことに加え、手入れさえすれば数百年でも使える建物の耐用年数をどうするのか?という問題もあります。耐用年数を合理的に見積もることが非常に困難なのです。
このような事情のため、イギリスでは土地と建物を一つの有機的な構成物とみなし、定期的に時価評価を実施して建物に生ずる経年での減価を認識することになっています。日本のように、RC造は何年、S造は何年で償却というように簡単に経済的価値の経年での減価を計ることができないのです。

ビジネスにおいて、イギリスの減価償却の方法は煩わしく効率が悪いように思いますが、古きよき建物を後代に遺していくという観点では素晴らしい制度だと感じます。

日本は地震が多いという特殊性はありますが、建築技術の向上や、税制の改革などで日本においても古きよき建物を後代に遺せるように舵を切る時代が目の前まで来ていると思います。

【不動産】仲介手数料無料で消費者は本当に得をするのか?

数年前より、不動産賃貸仲介会社を中心に「仲介手数料無料」という宣伝文句が広がっています。

住宅を借りる際に発生する家賃の一ヶ月分相当額の仲介手数料が安くなるということで、一見すると得と考えられるのですが、仲介手数料無料に飛びついた消費者は本当に得することができるのでしょうか。

今まで住宅を借りる際に必要であった家賃の一ヶ月分相当額の仲介手数料をなぜ無料にできるのか、その仕組みから考えなければなりません。不動産賃貸仲介会社は、住宅を借りたいお客さんと、住宅を貸したいオーナーさんを繋いで賃貸契約を成立させることにより発生する仲介手数料で糧を得ています。より良い条件の住宅を安い家賃で借りたいお客さんと、あまり良い条件でない住宅(すなわち安く買った物件)を高い家賃で貸したいオーナーさんを繋ぐのが仕事な訳です。オーナーさんは、沢山の手数料(例えば家賃の3ヶ月分というケースを想定)を賃貸仲介会社に払ってでも、あまりよい条件でない住宅を高い家賃で貸した方が得をします。なぜなら、何もしなければ空き家のまま一円の家賃も入ってこないままですが、3ヶ月分だけ手数料として支払いすれば4ヶ月目以降分からは家賃を得ることができるからです。
(厳密に言えば、3ヶ月分の手数料のうち、1ヶ月分は仲介手数料として、残り2ヶ月分は広告料という名目でオーナーさんから賃貸仲介会社に支払いされます。宅地建物取引業法という法律で、賃貸仲介会社は家賃の1ヶ月分以上の手数料を仲介手数料として得てはいけないという規制があるため、入居者を集めるための広告料の名目で別に手数料を得ていることになります。)

この場合、賃貸仲介会社は一円の手数料も払ってくれない住宅を借りたいお客さんと、手数料を沢山くれる住宅を貸したいオーナーさんのどちらの希望を重視して賃貸契約を成立させようとするでしょうか?誰がどう考えても、オーナー側に有利な条件で賃貸契約を成立させようとするのは明確です。

不動産というは、相場があるのですが、見る人によって感じる価値というのが異なる商品であり、非常に価格の妥当性が判りにくい商品です。インターネットの普及により住宅を借りようとするお客さんも、自身でインターネット等を活用し、周辺の相場を調べて価格の妥当性を判断できる人もいますが、そうでない人の方が多いのが実情です。

アメリカやイギリスなどでは、不動産の賃貸仲介に限らず、大型の企業買収などのコンサルティングにおいても、売主・買主双方の代理を行う所謂両手仲介は禁止されております。本来、買主側の仲介会社であれば買主の利益の最大化をはかるためだけにアドバイスを行うべきところ、売主・買主双方の代理を行っている人間が、それぞれの利益の最大化のアドバイスができるはずがなく、利益相反行為にあたるため禁止されているのですが、この日本では時代遅れのこの仕組みが今でも存続しています。2009年に民主党政権がこの両手仲介を禁止しようとしましたが、不動産業界の猛反発で頓挫した経緯があります。なぜ不動産業界は猛反発するのか?両手仲介ができた方が不動産業界が儲かるからです。両手仲介はできるのに、仲介手数料には上限を設けているこの法規制は時代遅れとなっているのは明確です。

「ただより高いものはない」という先人が経験的に知った真実があります。この言葉は、この世の中のビジネスの成り立ちを的確に語っていると思います。

【不動産】空き家の固定資産税

住宅が建っている土地について、住宅1戸につきその底地である土地は200㎡は住宅用地として固定資産税額は6分の1となります。転居相続で空き家になった建物を取り壊しすると固定資産税が6倍になるため、そのまま空き家が放置される一つの要因となっています。

自民党の空き家対策促進議員が「空き屋対策の促進に関する特別措置法」http://miyaji-kazuaki.com/_userdata/131217-akiya-taisaku-hoan.pdf を国会に提出しました。市町村は空き家データをデータベース化し、解体修繕への勧告命令や行政代執行を可能とすることとなります。空き家を自主撤去すれば固定資産税は6分の1のままとできるという特例が、2015年度税制改正での議論になります。

アメリカのデトロイト市でも、自動車不況の影響で多数の空き家が存在していますが、倒壊の危険がある建物については、何と所有者不明のままでも、その建物を市が解体し更地にできる法律がある様です。中国ならまだしもアメリカでもその様な法律があることが驚きです。。しかしながら、その解体コストについては、デトロイト市が負担することとなるわけですが。。

日本において、人口減少社会が既にスタートしており、これから更に空き家問題が大きくなることは誰の目にも明らかです。国土交通省の「個人住宅の流通促進に関する検討会」が空き家個人住宅流通促進への最終報告を行いました。http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000022.html

日本でもこれらの法律整備により、空き家対策が進むことが期待されますが、法整備よりももっと大切な話しとして、日本における建物価値の考え方を市民レベルで変えていくことが必要と考えます。日本は30年で建物価値はゼロになるという風に考えますが、欧米では、適切に管理され適時リニューアルされている建物については築が古くなっても、建物価値は上がっていくというマーケットとなっています。地震が多い日本において、欧米の感覚をそのまま持ってくることは難しいと思いますが、少しでもその感覚が根付けば、S造のペラペラの建物ばかりが建ち並ぶ町並みが少し良くなると思いますし、その様な建物はいざ空き家になった時でもその時代にあった使われ方をされていく様になると思います。

【不動産】収益不動産としてのホテルセグメント

過去からビジネスホテルを中心に、ホテルの土地建物の保有と、ホテルのオペレーション(経営)を分離し、収益不動産としてホテルを保有することは活発に行われてきておりますが、観光庁のビジット・ジャパン事業が成功しているのか?中国・東南アジアなどの経済発展による観光客総数が増加しているのか?はたまた円安が進んでいるからなのか?は判りませんが、訪日外国人観光客が急激に増加していることに起因して、収益不動産としてのホテル保有に対する注目度が高まっています。
今年についても、過去最高の訪日外国人観光客数となっており、10月までの推移を見れば年間1,300万人を突破することが確実な情勢となっています。

東京・京都など過去から訪日外国人観光客が多く、過去からホテル客室数(ストック)が充実しているエリアでもホテルが客室不足(稼働率上昇)となっているのですが、過去には訪日外国人観光客があまり滞在しなかった都市においては、更にホテルの客室不足が深刻な状態となっています。地方空港のLCC就航、インターネットにより訪日外国人観光客が容易に日本の地方都市の情報を入手できる様になったことなどにより、地方都市にも訪日外国人観光客が訪れる様になっていることが要因と考えられます。
大阪も例に漏れず、関西国際空港へのLCC就航でアジア客が増加しており、過去は成田から日本に入って、東京〜京都を観光して帰国する流れが、大阪〜京都〜東京を回遊する流れになっていることから、大幅に大阪に宿泊する訪日外国人観光客が増加し、ホテルの客室不足が深刻な状況となっています。中長期的な視点としても、2,000万人の訪日外国人観光客に対応するため成田・羽田の発着枠を補う空港として関西国際空港の発着枠余力を使うというのが自然な流れとなっており、より大阪に滞在する訪日外国人観光客は増加する見込みとなっています。
大阪のビジネスホテルマーケットは、過去は、その他の都市からのビジネス客をメインターゲットとしたマーケットで、インバウンド客向けのホテルが非常に少ない状況であり、訪日外国人観光客の要望に応えられるホテルという観点では、更に客室が足らない状況となっています。

その様な状況下で、都心部を中心にインバウンド向けのホテルを新たに開発する動きも増えてきています。収益不動産としてのホテルは、レジデンシャルよりもボラティリティが高いものの、オフィスや商業施設よりもボラティリティが低く、比較的安定した投資対象と考えられています。更に、実際にホテルの運営を行うオペレーターとの賃貸借契約についても、中長期での定期借家契約が多く、入退去などの管理も必要なく、保有する手間も少ないということで、ホテルセグメントへの投資ニーズが高まってきている状況にあります。しかしながら、既存ホテルの売却物件が非常に少なく、新たにホテルに投資するには土地からの開発が必要な状況にあり、開発リスクをどうテイクするかというジレンマもあるのが実情です。

【不動産・資産税】法人を利用した不動産投資による相続税対策

法人を利用した不動産投資による相続対策の基本的なスキームをご紹介します。

【スキーム】
・親の預貯金を3億円出資することにより新たな法人を設立します。
・新会社は、6億円の年利回り8%の収益不動産を購入する際に金融機関から3億円の借入れをします。(取得費用その他の予備費は考慮せず)
・不動産取得から3年以内は、新会社が保有する不動産は時価で評価されるため、株式評価は3億円のままで相続税対策効果がありません。
・不動産取得から3年を経過した時点で、新会社が保有する不動産は相続税評価額(時価の70-80%程度・都心の利用価値が高い不動産ほど時価と相続税評価額の差が大きくなる傾向がある)で評価されることとなるため、新会社が保有する不動産価値は建物の経年劣化による減少を含め4億円、借入れは2.8億円(返済考慮後)で、株式評価は1.2億円と3億円から大幅に圧縮されることとなります。(時価と相続税評価額の差が大きい不動産であれば、株式評価はゼロに近づく)

【注意点】
・不動産取得後3年以内は通常の取引価額(時価)で株式が評価されるため、短期的には効果がある対策ではなく、将来を見越し中長期的な視点で使う必要がある。
・相続税の節税効果だけでなく、収益物件の収益性、元利金返済、インカムゲインに対する法人税負担などを考慮し、資金繰りをよく検討すること。
・親の手持資金を使うことになるので、想定外に3年以内に相続が発生した場合でも、相続税の納税資金が不足しない範囲での対応が必要。