カテゴリー別アーカイブ: 不動産(相続税対策)

【不動産・資産税】法人を利用した不動産投資による相続税対策

法人を利用した不動産投資による相続対策の基本的なスキームをご紹介します。

【スキーム】
・親の預貯金を3億円出資することにより新たな法人を設立します。
・新会社は、6億円の年利回り8%の収益不動産を購入する際に金融機関から3億円の借入れをします。(取得費用その他の予備費は考慮せず)
・不動産取得から3年以内は、新会社が保有する不動産は時価で評価されるため、株式評価は3億円のままで相続税対策効果がありません。
・不動産取得から3年を経過した時点で、新会社が保有する不動産は相続税評価額(時価の70-80%程度・都心の利用価値が高い不動産ほど時価と相続税評価額の差が大きくなる傾向がある)で評価されることとなるため、新会社が保有する不動産価値は建物の経年劣化による減少を含め4億円、借入れは2.8億円(返済考慮後)で、株式評価は1.2億円と3億円から大幅に圧縮されることとなります。(時価と相続税評価額の差が大きい不動産であれば、株式評価はゼロに近づく)

【注意点】
・不動産取得後3年以内は通常の取引価額(時価)で株式が評価されるため、短期的には効果がある対策ではなく、将来を見越し中長期的な視点で使う必要がある。
・相続税の節税効果だけでなく、収益物件の収益性、元利金返済、インカムゲインに対する法人税負担などを考慮し、資金繰りをよく検討すること。
・親の手持資金を使うことになるので、想定外に3年以内に相続が発生した場合でも、相続税の納税資金が不足しない範囲での対応が必要。

【不動産・資産税】相続税対策での収益不動産投資

ここ数年、相続税対策目的での収益不動産投資を検討されるクライアントが増加しています。団塊の世代が現役を引退され、次の世代に資産を効率的に継承することを検討される方が増えていることが原因だと思われます。現役時代から不動産投資に馴染みのある方であれば問題ないのですが、相続税対策が必要となって初めて不動産投資を検討される方については、慎重な物件選びとコンサルタント選びが必要となります。

ありえない話しだと思ってしまうのですが、中には不動産の本当の価値を判断できない税理士先生のコンサルティングにより相続税対策だけが目的になってしまい「時価5000万円の不動産を1億円で買うことにより相続税評価額を下げる」という様な相続税対策を行ってしまっている方も非常に残念な話しですが実際にいらっしゃいます。
不動産による相続税対策は財産価値を下げることが目的ではなく、時価ベースでの価値を保ちつつ、相続税評価だけを下げることが目的です。時価ベースでの価値と評価の違いを理解せず、時価ベースでの保有財産価値を積極的に下げてしまうのは相続税対策ではありません。

また別の失敗パターンは、時価で不動産を購入し相続税評価を下げることにも成功したものの、物件運営が稚拙で当初想定していた利回りを維持できず、資金繰りに窮するケースです。平成初期に銀行主導で進められた相続税対策を提案の切り口に進めたアパートローンなどがこれの典型になります。実際に資金繰りに窮して、競売されてしまう状況に至っているケースもよく目の当たりにします。私も元々銀行員でしたので、そのあたりはよくわかるのですが、銀行は融資するときに将来その物件が安定的に利回りを確保できるかどうか、その物件を買ってその方は本当にメリットがあるかなどを深く考えて融資を行うことはほとんど無いといっても過言ではないです。銀行内部の事情で、支店の融資目標を達成できるかどうかに関心の大部分が費やされています。ですので、銀行が勧めてくるから大丈夫とは限らないということを常に考えておかなければなりません。

不動産投資を検討される資産家の方に、数十万円の細かいお金には細かいのに、億を超えるお金には全く寛容な方が多くいらっしゃいます。数十万円までは普段よく目にする金額でその金額の大小がよくわかるのですが、億を超えるお金になると普段その大小を考えることが少ないため、意図せずおおざっぱになってしまうためです。そのため、弁護士、会計士、不動産鑑定士、不動産コンサルタントなどからコンサルティングを受ける数万円のコストをケチります。そんな数万円のコストを払わずに銀行やゼネコンが主催する相続税対策無料相談会に行かれます。銀行やゼネコンが無料で相談会で、相手が銀行だから、大手のゼネコンだから安心ということで、おおざっぱでお任せしてしまうため、主催者から見れば最高にいいお客さんになってしまいます。主催者としては、その相談会を開催するために専門家を講師として招いて話しをしてもらうのですが、その専門家のお客さんは誰だか考えたことがありますでしょうか。専門家のお客さんは、相談会に参加する方ではなく、銀行やゼネコンがお客さんなのです。専門家は日当をもらっても嘘は話はしませんが、物事の相手への伝え方には幅というものがあるのです。嘘ではなくても、本当ではないことは沢山世の中には存在します。

相続税対策や資産に対して何らかの対応が必要なのであれば、小さなお金には寛容に、大きなお金には厳密にが鉄則です!

【不動産・資産税】相当の地代

「相当の地代」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。平成バブルの絶頂時に「相当の地代」を使った相続税対策が流行したのですが、バブル崩壊後、将来の土地の値上がりが見込めなくなったことにより、「相当の地代」を使った相続税対策はあまり聞かなくなってしまいました。

平成バブルの後も、ファンドバブル〜リーマンショック〜足下ではまた不動産価格が大幅に上昇していますが、あくまでも5ー10年スパンでの上下動という状況で、平成バブル当時とは様相が異なり、インフレを伴いながら中長期的に大きい不動産バブルが再来するとは常識的には考えられません。ということは、「相当の地代」による相続税対策はもう役目を終えたということになるのかというと、そうとは言えません。

例えば、一棟収益マンションの土地建物を保有していた父の相続時に、子供に土地を、母に建物を相続した場合を考えてみましょう。父の相続時点でその配偶者である母と子供は同居を前提と考えます(逆に同居を前提としない場合は効果が薄い)。母は建物に加え、配偶者の特例を利用して相続税がかからないギリギリまでの現預金を合わせて相続する形とします。その上で母は相続した建物を第三者(いわゆる賃貸マンションの借主)に賃貸し、子供が相続した土地を借りるための土地賃貸借契約を締結し地代を支払いする形とするのです。但し、土地賃貸借契約を締結時に権利金を子供に対して支払いしないと権利金相当額の贈与だと言われてしまいますので、地代を「相当の地代」である6%の水準に設定します。そうすると毎年多額の現金が地代として母から子供に移転していくこととなり、父の相続時に相続した現金が激減していくこととなり、二次相続対策に非常に有用となります。そんなに多額の現金を地代として母親から受け取ったら子供は所得税の負担が大きくなりそうですが、このケースは母と子供を同一生計としていますので、母の家賃収入は申告の必要がありますが、地代を子供に払う場合には、支払った地代を経費に入れれないかわりに子供の収入にもならないのです。これにより母の不動産所得が極端な赤字となれば、事業とはいえず税務否認されると思われますので注意が必要です。父の相続時に母は無税、その後、母から子供への現金の移動が所得税も贈与税も無税という形となり、現金を確実に子供に移転する有用な方法になり得るのです。

やはり資産を次の代に効率的に承継していく方法として資産としての不動産は非常に有用です。今後、色々なケースをブログに書いてみたいと考えております。