ここ数年、相続税対策目的での収益不動産投資を検討されるクライアントが増加しています。団塊の世代が現役を引退され、次の世代に資産を効率的に継承することを検討される方が増えていることが原因だと思われます。現役時代から不動産投資に馴染みのある方であれば問題ないのですが、相続税対策が必要となって初めて不動産投資を検討される方については、慎重な物件選びとコンサルタント選びが必要となります。
ありえない話しだと思ってしまうのですが、中には不動産の本当の価値を判断できない税理士先生のコンサルティングにより相続税対策だけが目的になってしまい「時価5000万円の不動産を1億円で買うことにより相続税評価額を下げる」という様な相続税対策を行ってしまっている方も非常に残念な話しですが実際にいらっしゃいます。
不動産による相続税対策は財産価値を下げることが目的ではなく、時価ベースでの価値を保ちつつ、相続税評価だけを下げることが目的です。時価ベースでの価値と評価の違いを理解せず、時価ベースでの保有財産価値を積極的に下げてしまうのは相続税対策ではありません。
また別の失敗パターンは、時価で不動産を購入し相続税評価を下げることにも成功したものの、物件運営が稚拙で当初想定していた利回りを維持できず、資金繰りに窮するケースです。平成初期に銀行主導で進められた相続税対策を提案の切り口に進めたアパートローンなどがこれの典型になります。実際に資金繰りに窮して、競売されてしまう状況に至っているケースもよく目の当たりにします。私も元々銀行員でしたので、そのあたりはよくわかるのですが、銀行は融資するときに将来その物件が安定的に利回りを確保できるかどうか、その物件を買ってその方は本当にメリットがあるかなどを深く考えて融資を行うことはほとんど無いといっても過言ではないです。銀行内部の事情で、支店の融資目標を達成できるかどうかに関心の大部分が費やされています。ですので、銀行が勧めてくるから大丈夫とは限らないということを常に考えておかなければなりません。
不動産投資を検討される資産家の方に、数十万円の細かいお金には細かいのに、億を超えるお金には全く寛容な方が多くいらっしゃいます。数十万円までは普段よく目にする金額でその金額の大小がよくわかるのですが、億を超えるお金になると普段その大小を考えることが少ないため、意図せずおおざっぱになってしまうためです。そのため、弁護士、会計士、不動産鑑定士、不動産コンサルタントなどからコンサルティングを受ける数万円のコストをケチります。そんな数万円のコストを払わずに銀行やゼネコンが主催する相続税対策無料相談会に行かれます。銀行やゼネコンが無料で相談会で、相手が銀行だから、大手のゼネコンだから安心ということで、おおざっぱでお任せしてしまうため、主催者から見れば最高にいいお客さんになってしまいます。主催者としては、その相談会を開催するために専門家を講師として招いて話しをしてもらうのですが、その専門家のお客さんは誰だか考えたことがありますでしょうか。専門家のお客さんは、相談会に参加する方ではなく、銀行やゼネコンがお客さんなのです。専門家は日当をもらっても嘘は話はしませんが、物事の相手への伝え方には幅というものがあるのです。嘘ではなくても、本当ではないことは沢山世の中には存在します。
相続税対策や資産に対して何らかの対応が必要なのであれば、小さなお金には寛容に、大きなお金には厳密にが鉄則です!