過去からビジネスホテルを中心に、ホテルの土地建物の保有と、ホテルのオペレーション(経営)を分離し、収益不動産としてホテルを保有することは活発に行われてきておりますが、観光庁のビジット・ジャパン事業が成功しているのか?中国・東南アジアなどの経済発展による観光客総数が増加しているのか?はたまた円安が進んでいるからなのか?は判りませんが、訪日外国人観光客が急激に増加していることに起因して、収益不動産としてのホテル保有に対する注目度が高まっています。
今年についても、過去最高の訪日外国人観光客数となっており、10月までの推移を見れば年間1,300万人を突破することが確実な情勢となっています。
東京・京都など過去から訪日外国人観光客が多く、過去からホテル客室数(ストック)が充実しているエリアでもホテルが客室不足(稼働率上昇)となっているのですが、過去には訪日外国人観光客があまり滞在しなかった都市においては、更にホテルの客室不足が深刻な状態となっています。地方空港のLCC就航、インターネットにより訪日外国人観光客が容易に日本の地方都市の情報を入手できる様になったことなどにより、地方都市にも訪日外国人観光客が訪れる様になっていることが要因と考えられます。
大阪も例に漏れず、関西国際空港へのLCC就航でアジア客が増加しており、過去は成田から日本に入って、東京〜京都を観光して帰国する流れが、大阪〜京都〜東京を回遊する流れになっていることから、大幅に大阪に宿泊する訪日外国人観光客が増加し、ホテルの客室不足が深刻な状況となっています。中長期的な視点としても、2,000万人の訪日外国人観光客に対応するため成田・羽田の発着枠を補う空港として関西国際空港の発着枠余力を使うというのが自然な流れとなっており、より大阪に滞在する訪日外国人観光客は増加する見込みとなっています。
大阪のビジネスホテルマーケットは、過去は、その他の都市からのビジネス客をメインターゲットとしたマーケットで、インバウンド客向けのホテルが非常に少ない状況であり、訪日外国人観光客の要望に応えられるホテルという観点では、更に客室が足らない状況となっています。
その様な状況下で、都心部を中心にインバウンド向けのホテルを新たに開発する動きも増えてきています。収益不動産としてのホテルは、レジデンシャルよりもボラティリティが高いものの、オフィスや商業施設よりもボラティリティが低く、比較的安定した投資対象と考えられています。更に、実際にホテルの運営を行うオペレーターとの賃貸借契約についても、中長期での定期借家契約が多く、入退去などの管理も必要なく、保有する手間も少ないということで、ホテルセグメントへの投資ニーズが高まってきている状況にあります。しかしながら、既存ホテルの売却物件が非常に少なく、新たにホテルに投資するには土地からの開発が必要な状況にあり、開発リスクをどうテイクするかというジレンマもあるのが実情です。