【不動産】非居住者から不動産を買う場合の注意点

昨今のアジア諸国の経済発展や、円安の進行により、日本の不動産がアジア諸国との比較で割安となっていることから、それらの国の人々が日本の不動産に投資を行う機会が増えています。実際、東京中心部の高級マンションには日本の非居住者からの購入希望者が殺到し、抽選により購入者を決定しているような状態になっています。日本の不動産に資本が流入してくることは、不動産マーケット自体には追い風で良いことが多いのですが、個々の売買の実務・税務などにおいては注意点があります。

・非居住者から不動産を購入する場合、売買代金の約1割(10.21%)は売主に渡さず、源泉徴収の上、税務署に納税する必要がある。

例えば、香港に居住する方から日本の不動産を1億円(税別)で購入した場合、約90百万円は売主に、約10百万円を源泉徴収として税務署に納税する必要があるのです。それを買主が知らずに売主に1億円を渡してしまった場合、買主は1億円の他に約10百万円を税務署に支払わなくてはならず、二重払いが必要となってしまいます。そんなルール知りませんでしたでは済まず、源泉徴収分の納税をしなければ、不納付加算税(1割)を加算した上で税務署は課税処分してくることになります。それでも支払わなければ、買主に対し差押えまでしてくることもあり得ます。その措置に不満を持った買主と国との間で裁判で争った判例もありますが、最高裁でも国が勝訴しており、買主は二重払いを強いられることが確定しています。買主は二重払いした源泉所得税部分について、売主に対し請求することは当然できますが、請求して払ってくれるかは別の問題です。
この例のように、売主の国籍が海外であるならばまだしも、国籍は日本で見た目も日本人で一年の半分(183日)以上を海外に居住、一年の半分弱を日本に居住している人から不動産を買った場合も同じ問題が生じます。一年の半分弱しか日本に住んでいなくとも、日本に住民登録をして住民票を発行することは可能です。住民登録ができるということは、その売主の日本人は住民票も印鑑証明も持っているのです。どうやって居住者なのか非居住者なのかを見分ければよいのでしょうか?書類の郵送先が海外になっているなどがあれば判断できる可能性はありますが、そうでなく且つ売主がその事実を隠していた場合、買主が独自にその判断をするのは実務上、非常に困難であると考えます。そのようなリスクも不動産売買には内包されていることへの理解が求められると同時に、不動産の売買を行う際には、そのようなリスクまで指摘してくれるアドバイザー(不動産仲介業者)を選定する必要があると考えます。