【不動産投資評価】売買価格 -その1-

収益不動産や事業用不動産に投資を行う場合には、対象不動産を適切に評価し、その不動産を取得・保有・売却する際の各種リスク、法令などを調査するデューデリジェンス(DD)が必要になります。

不動産は投資対象として税制的にも優遇されていることに加え、実物資産であり基本的には安定した資産ですが、投資を行う場合には知っておかなければならない要素が多岐にわたります。このシリーズでは、不動産投資における様々な要素を一項目ずつ深く掘り下げてご紹介していきたいと考えております。

初回は、不動産に投資する時に誰もが意識する「売買価格」についてです。不動産に投資する時に、「まずこの不動産は幾らなのか?」と最も気になる要素であり、非常にシンプルな話しだと感じますが、意外と奥が深いです。

例えば、あなたが「この不動産は幾らですか?利回りは何パーセントですか?」と質問した答えとして、「この不動産の値段は1億円です。利回りは10パーセントです。」と言われたとします。この答え方はある意味正解ですが、ある意味において不十分で不正確なものになります。

一つ目の問題点として、1億円という値段は、消費税込みの値段なのか?消費税別の値段なのか?が判りません。不動産売買においては、その不動産について土地が幾ら、建物が幾らという内訳を売主買主間で決めた後、建物部分について消費税がかかることとなります。この場合、土地5千万円、建物5千万円の不動産であると仮定しましょう。本日時点の消費税率8%で計算すると、建物の消費税額は4百万円になります。つまり、このケースで1億円が消費税別の場合、消費税込みの価格は1億4百万円になることとなります。消費税別では、利回り10パーセントでも消費税込みで計算すると9.61パーセントとなってしまいます。

※補足説明になりますが、利回り計算の分母とする売買価格は、アパートやマンションなどの居住用資産については消費税込み価格、オフィス、店舗、ホテルなどの事業用資産については、消費税別価格を提示するのが一般的に妥当と考えられています。理由としては、居住用資産から生じる賃料収入は基本的に消費税が課税されない非課税売上となり、事業用資産から生じる賃料収入は基本的に消費税が課税される課税売上となるのですが、その物件から生じる課税売上の比率に応じて、購入代金として支払いした消費税の還付を受けれるからという考えがベースにあります。つまり、アパートやマンションなどの居住用資産は購入時に支払いした消費税は払いっぱなしとなるが、オフィス、店舗、ホテルなどの事業用資産については購入時に支払いした消費税は後日還付を受けられることが基本となります。(購入主体となる法人や個人の消費税の取り扱い方法や、購入物件を買う前の課税売上割合などによっても還付を受けられるか受けられないかが変わるため、詳細は税理士などの専門家にご相談下さい。)

二つ目の問題点は・・・。次回ご説明させて頂きたいと考えております。